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企業情報TOP関連情報家をつくって子を失う 〜20年目の真実〜

家をつくって子を失う

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特別インタビュー 住まいと人間 松田妙子
 松田妙子さんは昭和2(1927)年、東京に生まれた。アメリカの南カリフォルニア大学テレビマスコミ科に学ぶ。NBCテレビのプロデューサーを経て、同34年に帰国、翌年、日本の実情を世界に紹介するPR会社コスモ・ピーアールを設立。同39年、日本ホームズを興し、2×4工法による経済的な住宅作りに成功した。
同社取締役を退任後の同50年、「ハウス55計画」を発案した。これはセントラルヒーティングつき、100uあたり500万円(昭和50年度価格)の、良質で低価格の国民住宅を、昭和55年中に提供する計画で、犬猿の仲といわれた、当時の通産省と建設省が組む国主導のマイホーム開発と話題になった。

同52年、(財)住宅産業研修財団を設立、同61年、生涯学習開発財団理事長に就任した。平成6(1994)年、東京都公安委員となった。またこの年、亡父・松田竹千代(元衆院議長・文相)の遺志を継いでベトナムのビエンホア孤児職業訓練センター有隣園園長に就任。同11年、71歳で東京大学大学院工学研究科の博士号を取得した。

近著に『親も子も後ろ姿を見て育つ』(講談社)、『一家一冊』(住宅産業研修財団)、そして学位論文「日本近代住宅の社会史的研究−中流住宅の発展と子供部屋を中心に」を一般向きに書き改めた『家をつくって子を失う』(同)がある。この書名は、かつて「文藝春秋」に発表し、大反響をよんだ評論と同名、より良い住まいと人々の幸せを願う松田妙子さん終生のテーマである。密室の子ども部屋は非行の温床「家をつくって子を失う」を「文藝春秋」に発表したのは、昭和57年(1982)年のことでした。
私は、長年、住宅産業にたずさわっていて、住宅事情の移り変わりと、社会の風潮との関連の探さに思いを致し、住宅事情は好転しているのに、社会風潮は悪化していくという矛盾に行き当たっていました。おりもおり、そのことを痛切に感じる出来事に遭遇したのです。 

 塾帰りらしい、7、8歳の少年と、閑静な住宅街でいきあいました。少年のズボンのジッパーが開いているのに気付き、教えたところ、「ありがとう」を言うでもなく、私を睨み返し、ジッパーを引き上げすれちがっていきました。そして、いきなり、「この助平ババアー!」の大声が私の背に浴びせられたのでした。これは私にはショックでした。

その少年が20年後にどのような人間になっているのだろうと恐ろしい気がしました。裕福な家庭に育ったらしい少年だが、おそらく家ではいつも自分の部屋に閉じこもり、家族との触れあいが乏しく、年長者に対する態度や、言葉づかいなど、躾けられたこともない日常を過ごしているのではなかろうか、と想像したのです。
多くの人がマイホームづくりを願いながら、ホームならぬハウスに関心を奪われ、大切な家庭教育や家族のコミュニケーションを忘れてはいないか。子どものための個室が利己主義を製造する密室や非行の温床になりかねないことに、気付いていないのではないか。その懸念を述べ、子ども部屋の見直しを「文華春秋」誌上で訴えたのでした。もちろんこれは住宅を供給してきた私自身の反省とそれからの課題だったのです。

 そして二十年がたちました。先の少年がどのように育ったかは知る由もありませんが、あれほどショックを受けた少年の「助平ババア!」など、今ではたいしたことではないと思うようになりました。そんなことを気にしているようでは、今の日本では生きていけない、といっても過言ではない、恐ろしい少年の犯罪が起きています。