図面の再利用をビジネスに

設計内容を規格化し、安価で個性的な戸建住宅を供給

  長引くデフレ。「安くても、ありきたりでない家を」というニーズに対し、建築家が動き始めた。規格化した戸建住宅の図面を使い回すことで、 打ち合わせ回数や設計業務を減らし、安価な住宅を供給しようとしている。

 図面に値段をつけて売る。なおかつ、購入者による改変を認める―。 そんな新しい試みを始めようとしている建築家が吉村靖孝氏(吉村靖孝建築設計事務所主宰、東京都渋谷区)だ。2011年2月の発売に先立ち、東京・ 北青山のオリエアートギャラリーで展覧会を開催している(10年12月17日まで)。

 タイトルは「CCハウス展」。 CCとは「クリエイティブ・コモンズ」 の略で、作者が著作権を保持しつつ、利用者にも再配布や編集を一部許可するというライセンスのあり方を指す。吉村氏は狙いをこう説明する。 「販売する図書には建築確認申請図も含まれ、敷地を書き入れればそのまま申請に使える。購入した人は、自由に改変してくれてかまわない。 むしろ、ここから多くのバリエーションが生まれることを期待している」

 プロジェクトの背景には、著作権に関する問題意識に加え、建築家として、小さな建物を手掛けたくても、なかなか手掛けられないジレンマがある。「設計料は一般的に規模に応じて支払われる。建築家が小規模な住宅を設計し、それをビジネスとしても成立させるには、何らかの仕組みが必要だ」

住宅図面をウェブで販売

 図面の改変を許容する「CCハウス」に対し、改変不可の図面によって住宅を"プロダクト"のように販売することを目指すのが「小さな家。計画」だ。事業の中心メンバーである三菱商事建材・木材建材本部流通開発部長の塩地博文氏は、狙いを次のように語る。

 「従来の注文住宅は価格が不明確だ。できるだけ大きく、できるだけ高くつくろうとするため、結果として顧客は重いローンを背負うことになる。いわばインフレ型販売。デフレ下では、どんなものをいくらで売るか、事前に明らかにするべきではないか」

 「小さな家。計画」では、図面を忠実に再現した3次元CGによって「どんなもの」かを提示する。価格も、設備機器などをすべて含んだ総額を明示する。

 販売はこれらの情報を掲載したホームページを通して行う。営業マンが応対する従来型の販売方法では、顧客の個別の要望に応じる注文住宅式に戻りかねないからだ。代わって「ハウスコンシェルジェ」と呼ぶスタッフがメールや電話で敷地への配置やインテリアの相談に応じる。あらかじめ図面に合わせた部材流通・加工・組み立ての仕組みを構築しておき、顧客には原則として提携プレカットメーカーと請負契約を結んでもらう。

 不特定多数の敷地に対応させるため、建築面積は20坪以下に抑えた。「今は世帯当たりの人数が減っているから、小さな家の需要が見込める」と塩地氏は言う。

 間取りやデザインが変更できないので、家自体のバリエーションが必要だ。現時点のラインナップは迫英徳氏(シンケン、鹿児島市)が設計した「モイスのいえ」など3件だが、今後、広く図面提供を募っていく計画だ。

 図面の提供を受けても、その段階ではラインナップに加えるだけで金銭授受は発生しない。実際に成約した時、1棟当たり50万円までの「図面利用料」が支払われる。

 11月1日に九州地区限定で先行販売を開始。本体基本価格は税別で「1500万円から」としている。

「日経アーキテクチュア 2010年12月13日号」
日経BP社 http://www.nikkeibp.co.jp/


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